PCM(計画立案)の紹介

先月PCM(Project Cycle Managementの略)手法の研修を受けてとても良い内容だったので整頓を兼ねて共有します。この投稿の内容としてはPCM手法の概要と研修での気付き・学びを中心に、PCM手法での企画・立案に役立つアプリなども少し取り上げます。(なお、この投稿では、私が協力隊で派遣されたラオス国立大学を例として挙げます。実際の活動とは違うところもありますがご了承ください。)

 

まず、PCMは開発援助を効果的に行うため開発されたプロジェクト管理手法です。計画・立案、モニタリング、評価の3つの手順を繰り返して行うことにより、プロジェクトをより良いものにすることを目的としています。他のプロジェクト管理手法との大きな違いはプロジェクトの計画・立案~評価まで一貫してPDM (Project Design Matrix)と呼ばれるプロジェクトの概要表を用いることです。

最初の手順である計画・立案の成果としてPDMとPO (Plan of Operations)という活動計画表が完成します。そして、そのPDMをプロジェクトの実施中の達成度の確認やプロジェクト終了時のプロジェクトの評価に用いることで、プロジェクトを1つのものさしで管理することができ、プロジェクトを一貫性と論理性をもった形で管理することができるというものです。

PCM手法は参加型計画、モニタリング、評価の3つから構成されますが、参加型計画手法および、モニタリングは元隊員、IT技術者として学ぶことが多かったです。評価手法は客観的な指標でどうやってプロジェクトやその効果を測る方法についてで、個人的にはとても面白かったですが、協力隊やプロジェクトの要件・計画をしている方にとっては始める前に評価なんて、、、と思ってしまうかもしれませんね。

まずは、計画手法についてご紹介します。計画は以下の6つの手順 で行います。
1. 関係者分析
2. 問題分析
3. 目的分析
4. プロジェクトの選択
5. PDM(プロジェクト概要表)の作成
6. PO(活動計画表)の作成
以下、それぞれを紹介します。

1.関係者分析

今回取り上げる問題について関係する人を、問題を解決で喜ぶ人、反対する人など立場ごとに挙げていきます。例えば、私の派遣先では、新しい授業をすると学生は喜ぶはず、若手の先生は反対するかも、学科長に新しい授業をカリキュラムに組み込んでもらうなど、授業をするにしても色々な登場人物がいることが分かります。次に研修では、これらの登場人物のSWOT分析を行いました(強み、弱み、外部の良い機会、外部の脅威)。
これも例示すると、S:お互いに助け合う・先生に頻繁に質問する、W:ITの理論や計算力が弱い、O:インターネットで情報がたくさんある、T:ラオス語の教科書がない、など。


2.問題分析
次に、プロジェクトの対象となる人をとりあえずでいいので決めます(問題を分析すると変わることもあるので、あまり考えすぎない)。そして、その人たちが抱えているであろう問題を出来る限りたくさん出します。この時には問題の優劣をつけません。そして、出し終わったら、取り組むべき問題を1つ(これもとりあえずで構いません)選んで、原因と結果でツリーを作成します。例えば、大学に予算がない、英語が苦手な学生が多い、新しい技術を身につけられないなどの問題の中から、プログラミングの演習が足りていない、というのを中心問題として設定したら、その原因として、演習時間が短い、ラオス語の教科書がない、演習が効率的に行えていないなど、、、。

3.目的分析
問題の分析が終わったら、問題を反転させて問題が解決した状態を考えていきます。まずは中心問題を反転させて、問題の解決した状態を示し、次に、その状態にするための手段を考えます。例えば、「プログラミングの演習が足りていない」を「プログラミングの演習が十分である」と設定し、次に、そのための手段を考えます。この時、問題分析で出なかったものも足して構いません。「パソコンを1人1台になるようにする」、「授業以外でもパソコンが触れるようにする」など足していきます。問題分析で出たものは大体そのまま解決策になります。「ラオス語の教科書がない」は「ラオス語の教科書がある」という感じで手段となります。


※この表で赤い背景のものはあとから思いついて追加したものです。

4.プロジェクトの選択
このように目的分析を行ったら、次に手段をグループ化して、どのアプローチを行うかを考えます。全てのアプローチが出来るならいいのですが、予算や期間などの制約があるので、効果やコスト、実現可能性などからアプローチを選定します。例えば、中心目的を「プログラミング能力向上」に設定して、「学力向上アプローチ」、「PC手配アプローチ」、「授業改善アプローチ」、「テキスト作成アプローチ」などのグループが出来たとします。この中で、学力向上には数年かかるから協力隊の派遣期間(2年間)では難しい、PCの購入は大学やJICAの予算として見込めないなど基準を考えて、「授業改善アプローチ」、「テキスト作成アプローチ」を選びます。研修で教えてもらって大事だなと思ったのが、この時にアプローチ間で相乗効果があるかどうかも考えます。例えば、学力向上とPC手配はあまり関連性がないですが、テキスト作成と授業改善では、作成したテキストを授業で利用できるので、より効果が高くなることが見込めます。

5.PDMの作成
ここまでできるとPDMはすんなり作成することができると思います。PDMには以下の項目があり、それぞれを埋めていきます。
・プロジェクトのタイトル、対象者・対象地、期間
・プロジェクト目標
・上位目標
・成果
・活動
・投入
・指標、指標データ入手手段
・前提条件
・外部条件


・プロジェクトのタイトル、対象者・対象地、期間
タイトル:「ラオス国立大学プログラミング授業改善プロジェクト」
対象:若手の先生
対象地:ラオス、首都ビエンチャン
期間:20YY/MM/DD ~ 20YY/MM/DD

・プロジェクト目標
これはプロジェクトを選択した際のすぐ上にある目的に当たります。
「若手の先生のプログラミング指導力の向上」

・上位目標
プロジェクトと外部条件によって達成されるより上位の目的です。これは多くの場合、中心目的が当てはまります。中心目的を達成するための具体的な手段がプロジェクトで、そのプロジェクトがうまく行くと中心目的が達成されるという考えです。
「若手技術者のプログラミング能力を向上する」

・成果
プロジェクトの選択で選ばれたアプローチとなります。
「1.テキストが作成される」、「2.若手の先生の教授能力が向上する」

・活動
上記の成果のために必要な作業を大まかに洗い出します。
1.1.学生の知識・能力・情報源を調査
1.2.テキスト作成
1.3.現地語に翻訳
2.1.先生の指導方法や現地の社会慣習を調査
2.2.モデル授業実施
2.3.若手の先生による実践

・投入
ここでは必要な資金、人、モノをリストアップします。
協力隊の場合は、多少の資金、自分(周囲の同職種隊員)、ちょっとした備品といった感じだと思います。

・指標
上位目標、プロジェクト目標、成果が達成できたかどうかを測ることができる客観的な指標です。ぴったりくる統計などがあればベストですが、なければプロジェクトメンバーで調査してデータを取ります。
学生に出来ること、分かることのアンケートをプロジェクト前・中・後に行い、能力が向上しているか測る
若手の先生に対して能力評価を行い、その評価が改善しているか測る

・指標データの入手手段
上記の場合は、アンケート。それ以外では、統計や担当者への聞き取りもあります。

・前提条件
プロジェクトをスタートさせるための条件で、例えば、大学による承認などがあります。

・外部条件
プロジェクトでコントロールできない、不確実なリスクをここで挙げます。
例えば、大学の統合や先生の転職など。

そして、作成されたPDMは矢印の因果関係で目標を達成していくと想定されます。これを「PDM縦の論理」と言います。前提条件が満たされて、しかるべき投入を行うことで、活動が行えます。活動を行い、その行にある外部条件が満たされることによって、成果をあげることができます。そして、成果をあげるとともに、その行にある外部条件が満たされることによってプロジェクト目標が達成されるという流れです。

6.活動計画表(PO表 Plan of Operations)の作成
そして最後に活動計画表を作成します。これは大まかなスケジュールで良いそうです。
IT系の人の中ではタスクの前後関係とかが気になるかと思いますが、マイルストーンだけ抜き出したものと理解してもらうとだいたい合っていると思います。隊員やOVの方は現地事務所に提出した協力隊の活動計画表を思い出すと思います。まさにあれです。
ここでは私が協力隊の時に作成した活動計画表を紹介します。(今改めて見るとこんなにうまくは行きませんでしたが、、、)

隊員としてはプロジェクト目標など意識していませんでしたが、現地JICA事務所や配属先の作成した要請(プロジェクト目標)に従って、あげるべき成果や行うべき活動をもやもや考え、ボランティア活動計画表を作成していたということなんだと今さらながら思いました。今活動に悩んでる隊員の方、要件がころころ変わるプロジェクトでモヤモヤしているIT技術者の方、PCM手法で対象を分析してみると発見があるかもしれません。

モニタリング・評価もこの投稿で触れたかったのですが、長くなってしまったので次回以降の投稿でまたお話しさせてください。

そうそう、忘れてました、今回この問題分析はFrieve EditorというWindows向けのアイデア出しのツールを使って作成しました。アイデア出しではXMindなども有名ですが、シンプルなのが気に入って長年利用しています。簡単に遠隔地間で共有したい場合はGoogle Slidesが簡単かと思います。

Frieve Editor


XMind


Google Slides

参考URL
外務省 HP(PCM手法について概要が紹介されています)

JICA HP(PCM手法を実践する場合の注意点について紹介されています)

PCM Tokyo
とても詳しいPDF(100ページ)のテキストです。研修を受ける時間がないという方はこのテキストを見ると具体的なイメージが湧くかと思います。

今回受講した研修(コミュニティ開発隊員は派遣前にPCM研修を受けるという話も聞いてます)

ラオス国立大学工学部IT学科での活動や協力隊に興味がある方
2017年11月07日現在、募集はすでに締め切られていて選考中のため2018年の2月あたりまでは派遣隊員が決まるか、改めて募集となるか不明だそうです。

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