文化の違いをグラフで見る

先日『異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』(エリン・メイヤー)という本を読みました。その中で、面白い観点が取り上げられていたので紹介します。

この本は冒頭で、アメリカ人がヨーロッパでプレゼンをしたらうまくいかなかったという事例を挙げています。そして、その原因がアメリカの結論を先に言い、例をたくさん挙げるコミュニケーションスタイルにあるというのです。実は、ヨーロッパでは、前提や語句の定義などを細かく議論し、その上で結論に至るというコミュニケーションが好まれるのだそうです。このような例からスタートするこの本はなかなか面白くお勧めです。

さて、この本についてもう少し詳しく説明させてください。著者によると、文化の違いというのは複数の観点の軸それぞれに0から100のようなグラデーションがあり、その軸ごとにその文化を分析すると、文化の大まかな傾向がつかめるのだそう。といっても分かりにくいと思うので、弊社社員のゆかりのあるアジアや西アフリカ地域、そして参考にアメリカを選んで比較してみました。ここでは各国の文化を以下の6つの軸で表しています。

権力格差許容度
(Power Distance Index)

この指標はヒエラルキー型の権力関係を許容する度合いを指標化したもの、だそうで、数値が大きいほどより上下関係を許容します。より分かりやすく言うと、偉い人の一声で物事が決まるのか、それともフラットな話し合いで決まるのかということです。これを見てみると、日本は(私にとっては)意外とフラットに物事が決まっているように見えます。

個人主義か集団主義か
(Individualism versus Collectivism)

これはそのままで、数値が大きいほど個人主義的、数値が小さいほど集団主義的です。これを見ると日本は案外個人主義的ですが、アメリカの個人主義は際立っているように見えます。

競争・達成肯定的か協調・謙虚的か
(Masculinity versus Femininity)

英語では男性性対女性性なのですが、含意としては、競争や獲得に重きを置くか、それとも協調、謙譲、人への配慮に重きを置くかを表し、数値が大きいほど競争・達成を重視します。これを見ると日本はアメリカよりも競争主義的となっています。これはけっこう意外な気がする、、、。

不確実性回避傾向
( Uncertainty Avoidance Index)

これもそのままで、数値が大きいほど不確実性を避ける傾向があることを表します。これは海外にいたことあるとけっこう納得の結果ではないでしょうか?日本は不確実なものを避ける傾向にあり、新しい商品やサービスはなかなか浸透しないように思います。

長期傾向か短期傾向か
(Long Term Orientation versus Short Term Normative Orientation)

これは長期的な観点に重きを置くか、短期的な観点に重きを置くかを表し、数値が大きいほど長期的観点を重視します。これも日本は長期傾向が突出していて、長期的な継続に重きを置いているように見えます。

熱中的か抑制的か
(Indulgence versus Restraint)

これは衝動や欲望に素直であることを重視するか、自己規律を重視するかを表し、数値が大きいほど衝動や欲望に素直であることに肯定的です。日本やタイは抑制的で、アメリカや西アフリカは熱中的となっています。

まとめ

日本のグラフを見ると納得する部分が多かったのではないでしょうか?一方で、日本と同じアジアの仏教国のタイが意外と西アフリカ地域と近いことが分かります。そして日本とアメリカを比較するとほとんどすべての側面で大きく異なっていて、文化的にはかなり遠い国と言えそうです。もちろんこれは簡便な文化の分析ツールですので実際にはもっと複雑ですし、個人によって違いもあるかと思います。とはいえ、海外で仕事、生活をするにあたってはこういった点を意識しておいた方が良いでしょう。

参考

自分でも試してみたいからはこちらのサイトで国名を入れてみてください。

www.hofstede-insights.com

グラフのデータはこちらのサイトからダウンロードさせていただきました。

geerthofstede.com